異性との交際が不法行為となる限界事例

配偶者ある異性と手をつなぐ行為や面会する行為は不法行為になるか、という問いについて、以前、それが故に肉体関係を推認させる局面と純粋にそれらの行為しかない局面とを区別すべきであり、基本的には、純粋に手をつないだり面会するというだけでは慰謝料請求を否定している例が多い、と説明をしました。(異性との交際が不法行為となるのはどういう場合か

異性との交際が不法行為となる限界事例

では、具体的にこれらの行為で、違法とされてしまったのはどんな場合であったか詳しくご紹介いたしましょう。

男女が手をつないていた場合

東京地裁平成17年11月15日判決は、狭い一室に男女が数日間にわたり同宿し、戸外に出た際には体を密着させて手をつないで歩いていたこと等からして、YとAの間には肉体関係があったと認めるのが相当として、慰謝料請求を認めました。

この事案は、手をつないでいただけでなく、男女が数日間に亘り同宿をしていたという事情もありますし、外に出たときに体を密着という事情もあるので、単純に手をつないでいただけではないですし、肉体関係を推認できた事例であったため、手をつないだ=違法とした事例では無いことに注意が必要でしょう。

これに対し、否定例として、東京地裁平成20年10月2日判決は、原告の主張するように配偶者が被告と手をつないでいたとしても、そのことから当然に不貞関係の存在が推認されるものではない、と認定をしています。

この判決は、結局手をつないでいただけでは、不貞関係の存在が推認されないから、慰謝料を否定している点が重要です。つまり、何をしようが、不貞関係の存在が推認されなければ駄目だということです。

手をつないでいることそれ自体は慰謝料を請求できる事由ではないということです。

男女が面会をしていた場合

次に、面会行為について述べます。

東京地裁平成25年4月19日判決では、かつて不貞関係に会った被告が深夜時間帯に原告の配偶者と面会していたという事案でした。

同裁判例では、深夜の時間帯において原告の配偶者と面会していた被告の行為は、被告が配偶者と再び不貞関係を再開したのではないかとの疑いを抱かせるのに十分な行為であり、原告と配偶者との間の婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為であるとして、違法としました(慰謝料としては、50万円程度と低額です。)。

この判例の重要な点は、不貞関係の推認までは不要で、「疑いを抱かせるのに十分な行為」「婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為」という根拠で違法と認めた点です。

少し広い範囲で不法行為の成立を認めた判例だと言えます。

しかし、これ以外の裁判例では、単純に面会するという行為だけでは不法行為の成立を認めず、たとえば、ホステスが妻子のいることを知りながら男性を誘い、しばしば会って昼夜食を共にしたり、映画を鑑賞する行為について婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性があるとは言えない、として不法行為の成立を否定しています(東京地裁平成21年7月16日判決)。

この程度の面会では、妻としてはおかんむりでも、責任追及までは不可能だということなのです。妻の寛容を要求する判例だと言えましょうか。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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