離婚の知識
不貞慰謝料が増える要素~不貞の継続や回数
不貞の回数が多いと増え、少ないと減る
不貞慰謝料は定額ではなく、様々な要素で変動します。
たとえば、不貞行為の回数が多ければ慰謝料は高額となります。逆に、少ないと慰謝料は低額となりがちです。
素直に考えればそれは当然のことだと思います。
この点、東京地方裁判所平成25年3月21日判決は、「AYの不貞行為は1回にすぎない」、とし、東京地方裁判所平成20年10月3日判決は「YとAが肉体関係を持った回数は、合計3回にとどまる」とし、不貞行為の回数が少ないことを慰謝料減額の要素としています。
逆に回数が多いとしている例では、東京地方裁判所平成25年12月4日判決は、「本件の不貞期間は少なくとも8か月程度であり、X宅におけるものを含めて、継続的に少なくとも20回程度の性交渉」がある、とか岐阜地方裁判所平成26年1月20日判決のとおり「YとAは、平成24年1月10日から同年6月末ころまで本件不貞関係を継続し、本件不貞関係における性交渉は、1か月に少ないときで2、3回、多いときで4、5回くらいであり、本件不貞関係は同年6月末ころまで続いた(性交渉は20回程度)」等のように、回数の多さを慰謝料増額要素として評価している例があります。
続いていればかなり増額される傾向がある
また、訴訟係属後も不貞関係が継続している場合は、慰謝料も高額化しやすいと言えましょう。
たとえば、東京地方裁判所平成22年5月13日判決は、「交際を解消して自宅に帰ったA宅に赴き、不貞行為を再開させ、本件訴訟が提起された後も継続していることからすると、Yの行為は、欲望の赴くまま結果を顧みずにした身勝手な振る舞いであったといわざるをえず、Aが勤務先の上司であることを考慮しても、強い非難に値する。」として300万円の慰謝料を認めました。
また、東京地方裁判所平成22年10月7日判決は、Yは、Xとの離婚等について、Aに少なからず助言を行っているほか、Aの不貞相手であることが明らかにならないようにするため、 自らの特徴を偽ることなどを画策しつつ、 自らの行為がXの慰謝料請求権を発生させうることを認識した上で、Aとの不貞関係を継続し、しかも、本件訴訟係属後も、Aとの関係が恋愛の自由市場における結果に過ぎないなどと主張して不貞関係を継続していた。」として400万円の慰謝料を認めています。
不貞をした側は少なく主張するのが定石に
ゆえに、不貞で慰謝料訴訟を提起された場合はもちろん、内容証明郵便で警告された場合は、慰謝料請求を減らすため、不貞をした側は直ちに交際をストップするものです。
また、不貞の回数についても最小限で主張することが多いです。
不貞慰謝料を請求する側は、不貞の回数について正確には把握できていないことが殆どです。また、探偵でも雇わない限り、訴訟後の交際関係を知ることは難しいです。よって、回数を最小限で主張したり、交際はストップしたと主張しその場をしのぐケースは少なくないと思います。
しかし嘘をつくリスクは大きい
しかし、いかに慰謝料額を減らしたいからと言って、事実に反する主張を行ってはいけません。
相手方に証拠が握られている場合、かえって裁判所の不信感・不興を買うことになってしまい、窮地に陥る危険もあります。
意外なことですが、秘密を共有している当事者から情報が漏れるということも現実には結構あります。嘘をつくというのはとても難しいことなのだ、と思います。
なお、弁護士は嘘をつくことは職業的に許されていませんので、弁護士にだけ本当のことを告げ、それと矛盾する主張をしておいてほしいという要請を受けても応えることはできません。
正直に話して頂ければ、最悪の結果を避けることができますので、弁護士には真実を話していただきたいものです。
弁護士 片岡憲明
※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。