離婚の知識
調停に代わる審判
当事務所では、週に1回、家事事件の勉強会を行っています。
今回は、勉強会で検討した事項の中から、調停に代わる審判という制度についてお話しさせていただきます。
1 調停に代わる審判とは
通常、調停を申立てた場合、当事者が合意に至らなければ、調停は不成立として終了します。終了後は、審判手続に移行したり、当事者が訴訟を提起するなどすることになります。
しかし、調停の合意が見込まれない場合であっても、調停が係属している家庭裁判所は、当事者の衡平及び一切の事情を考慮し、相当と認めるときには、合理的かつ適切な具体的な解決案を、審判という形式で示すことができます。これを「調停に代わる審判」(家事事件手続法第284条)といいます。
調停は、当事者間の合意による解決を図る手続であるのに対して、審判は、裁判所が判断し決定する手続です。 調停に代わる審判は、職権で行うとされていますが、当事者は異議申し立てをすることができます(家事事件手続法286条1項)。
2 対象となる事件
では、どのような場合に調停に代わる審判が行われるのでしょうか。
家事事件における調停対象事件は、以下3つに分類されるところ、調停に代わる審判の対象となるのは、①別表第2事件及び②一般調停事件です。
- 別表第2事件(家事事件手続法別表第2に掲げられた事項に関する事件)
親権者の変更、養育費の請求、婚姻費用の分担、遺産分割など - 一般調停事件
離婚や夫婦関係円満調整など - 特殊調停事件
協議離婚の無効確認、親子関係不存在確認、認知など
(※③特殊調停事件は、調停で当事者の合意が得られない場合には訴訟によってのみ解決することとされています。)
3 調停に代わる審判が適切な場合とは
調停に代わる審判が適切な場合とは、具体的にはどのようなケースなのでしょうか。
調停に代わる審判は、審判ないし訴訟に移行することが当事者にとって過大な負担となったり、迅速な解決を損なうような場合に、活用されています。
すなわち、調停で当事者間の合意が得られないとはいえ、わずかな食い違い、又は、感情面での対立しかなく、大半の部分で当事者間の合意が得られているような場合です。
例えば、離婚についての条件は当事者双方納得しているが、一方当事者が、自分ばかりが妥協しているような気がして感情的に納得がいかないので積極的に合意できないというような場合が、これにあたります。
調停に代わる審判を行えば、裁判所が示す「審判」としての解決案に従うという体裁をとることができるので、当事者としても感情的に納得しやすいといえます。
4 まとめ
このように、調停に代わる審判は、調停で既に結論の大筋は明らかになっているような場合に、簡易迅速な解決を図ることができる手続といえます。このような場面に直面した場合には、一度検討してみてはいかがでしょうか。
弁護士 片岡憲明
※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。