離婚の知識
裁判官の目から見た不貞(不倫)の慰謝料請求における弁護士の活動
以前、裁判官の方とお話をする機会があったのですが、今、不貞(不倫)を理由とする慰謝料請求の事案が急増しているとのことです。
サラ金会社に対する過払金返還の事件、賃料未払などを理由とする建物明渡請求の事件の次に多いのだそうです。

裁判官として弁護士の訴訟活動について感じるのは、結構いい加減な訴状が多い、ということだそうです。
訴状というのは、裁判所に対して、被告に対する請求を認めてもらうために最初に提出する書面です。そのような重要な書面にいい加減なものが多いというのは由々しき問題です。
具体的に尋ねますと、訴状には不貞(不倫)がある、とだけしか書かずに具体的な事実を記載しなかったり、一応具体的な事実を記載していても、その主張を裏付ける証拠を全く提出していない例が多いのだそうです。
裁判官は、事案に対して判決を下さなければいけない責任ある立場なので、原告が曖昧・抽象的な主張をすると扱いに困ってしまうのでしょう。
しかし、我々弁護士の立場から申し上げると、なかなか確たる証拠が掴めなかったり、相手方が上手に嘘をつくのでなかなか手の内を見せられないといった事情から、訴状を曖昧にせざるを得ない場合もあるのです。最初からすべての証拠を出したり、詳しい主張をすることはリスクを伴うでしょう。
特に不貞の証拠は、高額な探偵費用をかけてようやく入手できるものなので、万が一にも慎重に提出したいです。
裁判官にはなかなか理解して頂けず、辛いところですが、依頼者のためにベストを尽くすしかありません。
弁護士 片岡憲明
※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



