夫婦仲が悪かったという主張の意味

不倫慰謝料の裁判において、必ずと言って被告側から主張されるのが、夫婦仲が悪かったと聴いていたので、慰謝料請求は認められないという主張です。

そもそも夫婦仲がとても良かったならば不倫など生じないはずですから、夫婦仲が悪い=慰謝料請求否定ならば、不倫慰謝料の裁判自体が成り立たないことになるでしょう。

夫婦仲が悪かったという主張の意味

ですから、夫婦仲が多少悪かろうが、婚姻関係が破綻していない限り、慰謝料請求が認められることになるのは明らかです。

では、婚姻関係が破綻していないにも関わらず、被告側が夫婦仲が悪かったと主張してやまないのは何故でしょうか。

それは、「夫婦仲が悪かったと主張すれば慰謝料が減額してもらえるかもしれない」と考えているからでしょう。

そのような考えは正しいのでしょうか。

そもそも不貞をして慰謝料請求が認められるのは、婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するからでした(最高裁判決平成8年3月26日判決)。

そうすると、婚姻共同生活が破綻に近い状態になっていたならば、権利侵害の度合は小さいと言えなくはありません。

したがって、夫婦仲が悪かった場合は、権利侵害の度合が比較的小さいため、慰謝料額が減額してもらえることもある訳です。

とは言っても、夫婦仲が悪かったというのは、非常に立証が困難ですし、不貞をしておいてそのような主張をすること自体裁判官に対する印象は悪いですから、余程の事情がない限り、減額の効果は高くないと思います。

東京地裁平成19年4月24日判決では、夫婦間の婚姻関係についてすでに破綻寸前の状態であったことを認めつつ、慰謝料200万円を認容しています。破綻寸前の状態でもこのような認容額になるのですから、それほど甘くはないですね。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
離婚相談票
PAGETOP

離婚相談票