離婚の知識
相手方に弁護士費用を請求をできるか
相手方に対して不倫慰謝料を請求するとき、併せて弁護士費用を請求できますか?と訊かれることが多いです。
たしかに、自分が被害を受けたのに弁護士費用を自分が負担するというのは不合理に感じるものです。
結論から言うと、不倫慰謝料の請求根拠は不法行為に基づく損害賠償請求なので、弁護士費用を請求することができます。

ただし、その金額は損害賠償額の1割程度に制限されます。たとえば、200万円が慰謝料額として認容された場合、弁護士費用は20万円の限度で認められることになります。
もっとかかっているのにどうして1割に制限されるかですが、理屈ではなく、「そうなっています。」としか言いようがありません。裁判官が考える弁護士費用が安すぎるのだと思いますが、いかんともできません。
なお、示談交渉の段階では、弁護士費用まで請求しないことが多いです。その理由は、弁護士費用まで請求すると紛争が激化し、早期の示談が成立できないからという実際上の理由です。裁判までやらないと取れないと考えた方が良いです。費用対効果を考えて弁護士費用を請求するかどうか検討するべきでしょう。
慰謝料請求を受ける側の立場ならば、訴訟提起がされてしまうと弁護士費用まで負担しなければならなくなる可能性があるので、訴訟提起前に示談をした方が良いこともあります。
訴訟になってしまっても、訴訟上の和解を成立させる場合は弁護士費用まで負担させないことが多いので、判決を回避するメリットは十分にあります。裁判所の意見を聴きつつ和解をすることが無難でしょう。
ポイント:
不倫慰謝料の請求に際して弁護士費用は請求できますが、損害額の1割しか請求できません。また、訴訟で判決をもらう場合以外は事実上請求できないものと考えておいた方が良いです。
弁護士 片岡憲明
※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



