離婚の知識
子供がいる人との不貞は慰謝料が高額になりやすい
先回のおさらい
先回コラムで取り上げたのですが、子供が不倫相手に対して独自に慰謝料請求はできないのが原則ですが、子供がいることをふまえ、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求額が増額されることが多い、と述べました。(子供がいるのに浮気。子供は不倫相手に慰謝料を請求できるか。)

子供の有無と裁判例
東京地裁平成19年8月24日判決(認容額200万円)、東京地方裁判所平成22年10月7日(認容額400万円)では、未成熟子の存在を幼い子どもがいることを理由に慰謝料額を増額しています。
その他多数の判決で未成年の子供の存在を指摘して、慰謝料を増額していると見られる裁判例は多数存在しています。
多くのケースでは200万円を大きく上回る慰謝料額が認容されています。
子供がいないと減額?
他方で、子供がいない場合は、慰謝料額を減じる方向で、子がいない点を認定している例が多く、東京地裁平成19年7月26日判決や、東京地裁平成21年3月27日判決、東京地裁平生年2月3日判決では、そのような点もふまえて慰謝料額を100万円~200万円の間で認容しているところです。
婚姻期間も重要な要素
このように見てくると、子供がいるかいないかが慰謝料額にとって大事なポイントのようにも思われますが、そう単純な話ではありません。
子供がいない事案は、子供ができるだけの期間を経過していない若い夫婦も多く、婚姻期間が短いケースも多いからです。
一見、子供がいないから慰謝料額が低いのだと思われる事案でも、よく読むと婚姻期間が1、2年であったり、3年程度であったりする例もあります。
そうすると、10年、20年の婚姻期間があるケース(未成熟子がいる場合が多い)と同列に扱うことができないのだということが分かります。
慰謝料額は種々の事情を総合考慮する
後日、書くつもりですが、慰謝料額の判断要素は様々なものがあり、それらが複雑に絡み合っているため、裁判官もこの要素があるから、この金額、と決めることはできず、事案にあらわれた要素すべてを総合考慮して事案ごとに慰謝料額を判断するしかありません。
したがって、裁判官と慰謝料額について議論していても、人によるし、事案による、と言う外無い、というのが我々弁護士の実感です。
弁護士 片岡憲明
※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



