クレジットカードの引落しがあったら婚姻費用を支払ったことになる?

婚姻費用

婚姻費用

夫婦は、生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用について、生活費を分担しなければなりません。これを婚姻費用といいます。

婚姻費用分担の始期については、婚姻費用分担を「請求した」時とされています。

その理由ですが、別居時から婚姻費用分担金の支払を認めることができるとすると、別居期間が長い場合、高額となり、婚姻費用分担の義務者(支払う側)にとって酷になること、これに対して、婚姻費用分担の権利者(支払われる側)としては、婚姻費用分担金の支払を求めるまでは、一応の生活をしていたと考えられること、などが挙げられています。

では、この「請求した」といえるためには、具体的に、何をすれば良いのでしょうか。

例えば、婚姻費用分担調停を申立てた時は、請求した時であることは間違いありません。

では、相手方に内容証明郵便で婚姻費用の支払を求めた場合でもどうでしょうか。
近時の名古屋家庭裁判所の実務では、内容証明郵便で婚姻費用の支払を求めた場合でも良い、といわれています。

ただ、この解釈は、変動する可能性があるので、確実を期すならば、調停を申し立てた時点と考えるのが、安全です。

未払い婚姻費用

未払い婚姻費用

婚姻費用分担の始期以降に支払われなかった分の婚姻費用は、婚姻費用の分担額が決まった際に、遡って請求ができます。

もっとも、婚姻費用を支払う側が、払われる側の生活費を一部負担していれば、それは既払い分の婚姻費用として控除することができます。例えば、相手方の預金口座から水道光熱費や携帯代の引き落としがあったり、クレジットカードの引き落としがあったりすると、控除することができます。

別居後のクレジットカードの引落し

上記のように、クレジットカードの引き落としがあった場合に、婚姻費用から控除できることになりますが、たとえば、その引き落としが、同居期間中のクレジットカード使用に基づくものであった場合、どうなるのでしょうか?
婚姻費用から控除できるのでしょうか?

別居後のクレジットカードの引落し

結論から述べると、それは同居期間中の経費ですから、別居後の婚姻費用を支払ったことにはならず、控除できません。

なお、繰り返しですが、別居後に使ったクレジットカードの引き落としがあった場合は、婚姻費用から控除できます。少しややこしいですが、注意が必要です。

まとめ

婚姻費用分担調停を申し立てられた後も、長期間にわたって婚姻費用が支払われないこともあります。その場合、調停成立や審判成立時にまとめて支払ってもらうことになります。

そのような場合、既払いの婚姻費用といえる支払がないか、注意深く預金口座の取引を見る必要があります。

弁護士 片岡憲明

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
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