相手方が行方不明の場合の裁判の始め方

配偶者が家を出て行ってしまい、行方が知れない。離婚したいがどうしたらよいだろう。
貸金を回収したいが、相手の居所がわからない。
このように、紛争の相手方の居所が分からない場合があります。
このような場合、どのように裁判を始めればよいのでしょうか。

最近、離婚を希望しているが夫の居場所が分からない、という女性からのご相談を受けたので、その事件を例にお話します。

相手方が行方不明の場合の裁判の始め方

(1)まずは普通に送達

訴訟を起こす場合、相手方に訴状が送達されなければなりません。相手方に、裁判が起こされたことを知らせなければならないのです。
通常、訴状は裁判所から相手方の住民票上の住所に送達され、相手方が訴状を受け取ることで、裁判が起こされたことを知ることになります。
しかし、相手方が行方不明で住民票上の住所にいない場合、訴状は受領されることなく裁判所に戻ってきてしまいます。
これでは裁判を始めることができません。

(2)公示送達の申立て

このような場合には、裁判所に対して公示送達の申立てを行います。
相手方の住民票上の住所を訪ねて住居や郵便受けの写真を撮る等して、相手方が住民票上の住所にいないこと、行方不明であることを調査報告書にまとめ、裁判所に提出するのです。
裁判所が調査報告書を見て、相手方が行方不明であると判断すると、裁判所は公示送達を行います。

(3)公示送達とは

公示送達とは、裁判所の前の掲示板などに、訴状その他の送付物を掲示する方法によってなされる送達です。
掲示を開始してから2週間が経過することで、送達の効力が生じ、裁判が始まります。相手方が現実に裁判が起こされたことを知る必要はありません。
相手方の居場所が分からないために裁判ができないというのは不合理であるとの判断のもと、相手方に訴状が届かないのであれば、一定期間裁判所に掲示をして、それによって送達がなされたことにするというわけです。

私が相談を受けた事件では、以上のような経過をたどって訴訟が始まりました。
この他にも、事案によって様々な送達方法がありますが、相手方の居場所が分からないからといって、裁判ができないわけではありません。
相手方の行方や現状が分からないという方も、まずはお気軽にご相談ください。

弁護士 大口悠輔

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
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