自分が不貞をしているとは思わなかった!?

不貞をすると慰謝料が請求されるのは、それが民法709条の不法行為に該当するからです。

民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。

自分が不貞をしているとは思わなかった!?

たとえば、交通事故で人を怪我させてしまった場合、民法709条に基づき、「過失によって」被害者の身体を傷害したため(「権利侵害」)、これによって生じた損害(たとえば、精神的苦痛に対する慰謝料とか、仕事を休業することによって生じた損害)を賠償しなければならないわけです。

重要なのは、故意・過失がなければ、被害者に対して損害賠償責任を負わないという点です。

たとえば、無過失の交通事故の場合、被害者に対して損害賠償責任を負うことはありません。

信号待ちで停車中に後方から追突され、不可抗力で前の車に追突したというような玉突き事故の場合、特段の事情がない限り、真ん中の運転手に何ら過失はありません。この場合、この運転手は過失が無いので被害者に対して損害賠償責任を負うことは無いわけです。

では、相手方に配偶者がいると知らなかった場合、故意が無いとして損害賠償責任を負わないことになるでしょうか。

多くの裁判例では、「被告の責任を認めるためには」「相手方と交際することが、いまだ破綻していない婚姻関係を破綻させるものであることを認識し、又はこれを認識しなかったことに過失があることを要する」(たとえば東京地裁平成20年10月28日判決)としています。

つまり、相手方が結婚しているとは知らなかったり、結婚していることは知っていても、婚姻関係破綻状態であると信じていた場合には、故意・過失が否定され、責任が否定される事になります。

もっとも、たとえば、交際相手からいつも夫婦仲が悪いと説明されていたと主張をして故意・過失が否定される例は極めて少ないのが実情です。

多くの場合、相手方の状況をきちんと確認することなく、相手方の話を鵜呑みにするだけでは、故意が認められないにしても過失が認められることになります。

たしかに、配偶者がいると分かっていれば、相手方が自分の歓心を買うために夫婦仲が悪いと嘘をつく可能性は十分に考えられ、少なくとも慎重に対応すべきであることから、過失があると言え、損害賠償責任を否定することはなかなか難しいでありましょう。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
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