不貞行為を知らなくても20年が経過すれば不貞慰謝料請求権は一部消滅します

3年の時効

不貞行為を知ってから3年間権利行使をしないと不貞慰謝料請求権が時効で消滅してしまいます。

不貞行為を知らなくても20年が経過すれば不貞慰謝料請求権は一部消滅します

20年の除斥期間

しかし、不貞行為を知らなかったため、権利行使ができなかった場合でも、権利発生から20年の時が経過した場合、不貞慰謝料請求権は、除斥期間が経過したことにより消滅してしまいます。

除斥期間というのは、3年の時効とは異なり、相手方が主張しなくても、裁判所が権利消滅を認定してしまうため、非常に重要な意味を持ちます。

裁判例

東京地方裁判所平成19年7月27日判決は「XのYに対する慰謝料請求権のうち、本訴提起の日である平成18年8月11日から20年前である昭和61年8月11日より前の部分は除斥期間の 経過によりもはや行使し得ないものと解される。」と判示しています。

また、東京地方裁判所平成25年4月15日判決も「夫婦の配偶者が他方の配偶者と第三者との不貞行為により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が同不貞行為を知ったときから、それまでの慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解する のが相当であるところ(最高裁判所平成6年1月20日判決参照)、本件においては、・・・ 昭和39年秋ころと昭和45年9月の2回、AとYの不貞関係がXに発覚しているから、昭和45年9月まで不貞行為に関するXのYに対する慰謝料請求権は、遅くとも3年後の昭 和48年9月に時効により消滅しているものということができ(民法724 条前段)、AYが同時効を援用したことも認められる。さらに、本件訴 訟提起は平成24年2月21日に行われているところ、平成4年2月20日以前の不貞行為に関するXのYに対する慰謝料請求権は、不法行為の ときから訴訟提起までに20年を経過することにより消滅しているとい うべきである(民法724条後段)。以上によれば、XのYに対する不法 行為に基づく損害賠償(慰謝料)請求権のうち、消滅せずに残存しているのは、平成4年2月21日以降の不貞行為に関するもののみというこ とになる。」

以上の通り、除斥期間で一部不貞慰謝料請求権が消滅するという点は判例からも明白です。

ただ、注意したいのは、全部ではなく、一部が消滅しているということです。
除斥期間にかからない残部については依然慰謝料請求が可能ということになります。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
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