2回目の不倫を防ぐため違約金の合意はできるか。

違約金合意自体は可能

不倫相手が不倫をしたことを謝罪し、慰謝料を支払うことになった後、今後は二度と再び不倫はしないと約束してもらうことがあります。
たとえば、今後の不倫相手が配偶者に接触した場合は1回につき100万円を支払う、などと合意をすることがあります。
このような合意は有効でしょうか。

2回目の不倫を防ぐため違約金の合意はできるか。

結論から言うと、やった行為に対し過大な金額でなければ有効であるということになります。

過大な違約金を合意した場合は妥当な金額に減額される

では、過大な違約金を合意した場合、合意全体が無効になってしまうのでしょうか

この問題については、すでに複数の裁判例がありますから、参考になります。

結論からいうと、違約金が過大な部分は無効となるが、相当な額については有効ということになっています。

東京地方裁判所平成17年11月17日は、次のような事案でした。

【事案の概要】
Xの度重なる注意・抗議にもかかわらず、Aと不貞行為を繰り返した事業経営者のYが、Xに対して、今度不貞行為をしたら5000万円を支払う旨了承したが、Yがその誓約に違反したというものである。なお、 YはXを襲撃するという殺人未遂事件も惹き起こしていた。

【判断の要旨】
不貞行為についての損害賠償として、 5000万円全額の支払をYに命ずるというのは高額に過ぎ、Yの不貞行為の態様、資産状況、金銭感覚、その他本件の特殊事情を十分に考盧しても、なお相当と認められる金額を超える支払を約した部分は民法90条によって無効であるというべきである。本件で は、……Yが本件殺人未遂行為に及んでいることからして、Yの行動が悪質ではあることは明らかであるが、それは後記殺人未遂行為に係る慰謝料の算定に当たって評価すべきであって、あくまで不貞行為についての慰謝料という観点から損害賠償の予定として相当と認められる金額を認定すべきである。
しかるところ、5000万円という金額は、Yが自ら提示したものであること、Yは会社の代表者を務め、本件殺人未遂行為の報酬として数千万円もの大金を拠出するなど、かなりの資力があり、金銭感覚も通常人とは異なっているとうかがわれること、不貞行為の内容をみても、Yは、先に誓約をしながら、平然とこれを破り、Aを唆して家出させて同棲に及び、さらにその後 の誓約の後も、すぐ、にAと不貞行為を再開し、入院中ですら逢瀬を重ねるなどその態様も大胆不敵で違法性は強いというべきこと、その他本件の各事情 を勘案すると、Yに対して不貞行為に関する損害賠償額の予定として支払を命ずるべき金額としては1000万円を限度とするのが相当と認められる。

・・・事案を見ていただくとかなり特殊な裁判例がであることが分かりますが、とにかく定められていた違約金額を厳粛した範囲で合意が有効になっていることが分かります。

なお、東京地方裁判所平成25年12月4日も同様の判断を下しています。

【判断の要旨】
本件違約金条項は、面会・連絡等禁止条項違反について、違約金を課すものであると認められるところ、違約金は損害賠償額の予定と推定されるから(民法420条3項)、その額については、面会・連絡等禁止条項が保護するXの利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有し、著しく合理性を欠く部分は公序良俗に反するというべきである。
そこで検討すると、面会・連絡等禁止条項は、YにAとの不貞関係を確実に断ち切らせ、Xの精神的安定を確保し、Aとの婚姻関係を修復するという正当な利益を保護するためのものであって、その目的は正当であると認められる。そして、……Xとしては、面会・連絡等禁止条項の履行を確保することが、本件違約金条項を定める大きな目的だったことが認められるが、上記正当な目的を有する面会・連絡等禁止条項の履行を確保するために、その違反行為に違約金を定めることも、上記目的を達成するための必要かつ相当な措置であると認められる。しかしながら、本件違約金条項による違約金額 1000万円は、 メールや面会等による接触にとどまらず不貞関係にまで至った場合に認められる損害額に照らすと、損害賠償額として著しく過大であるというほかない。……そして、面会・連絡等禁止条項に違反してAと面会したり電話やメール等で連絡をとったりした場合の損害賠償(慰謝料)額は、その態様 が悪質であってもせいぜい50万円ないし100万円程であると考えられるから、履行確保の目的が大きいことを最大限考慮しても、少なくとも150万円を超える部分は、違約金の額として著しく合理性を欠くというべきである。したがって、本件違約金条項のうち、著しく合理性を欠き、公序良俗に反し無効である。

最初の裁判例に比べると後者の裁判例の方が常識的な金額であると思われます。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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