有責配偶者でも離婚が認められる場合とは

有責配偶者とは、不貞行為に及んだなど、婚姻関係の破綻につき主として責任のある者をいいます。

私共が離婚相談を受ける時に、有責配偶者の方から、離婚が可能か聞かれることがあります。

そこで、今回は、有責配偶者でも離婚が認められる場合について、対話形式でご説明させていただきます。

有責配偶者でも離婚が認められる場合とは
相談者
相談者

私(50歳)には、妻(50歳)と息子(18歳)がいるのですが、10年前から、別の女性と不貞関係にあります。妻と別れてその女性と結婚したいと思っているのですが、可能でしょうか。
なお、妻は、私が別の女性と不貞関係にあることを知っています。

弁護士
弁護士

有責配偶者からの離婚請求は原則として許されません。
もっとも、事情次第では、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。

例えば、①別居期間が長期間に及んでいること、②未成熟子が存在しないこと、③離婚により相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれることにはならないこと、という3つの事情を全て満たす場合には、離婚が認められる可能性が高いです。
また、未成熟子がいても、別居期間がかなり長期間に及んでいる場合や子の監護状況が整っている場合などには、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。

なお、未成熟子とは、自己の資産又は労力で生活できる能力のない者をいいます。
したがって、子供が成人(18歳)に達していても、例えば大学生の場合は、大学を卒業するまで未成熟子として扱われることになります。

相談者
相談者

①の事情に関してお聞きしたいのですが、どれぐらいの期間別居していると長期間の別居といえるのでしょうか。
なお、私は10年前から別居しております。

弁護士
弁護士

10年間別居していたのであれば、長期間の別居といえるでしょう。
また、10年に満たなくても(5~6年程度であっても)、別居後の婚姻費用の支払や財産分与、慰謝料等において、誠意ある対応、提案をしていると、長期間の別居という①の要件を満たす場合があります。

相談者
相談者

②の事情に関してお聞きしたいのですが、未成熟子がいても離婚が認められるのは、具体的にどのようなケースなのでしょうか。

弁護士
弁護士

ケースバイケースではありますが、以下の事情を考慮して離婚を認めた裁判例があります。
1.別居期間が8年10ヶ月と長い。
2.別居以降、毎月必要十分な生活費を支払い続けてきた。
3.慰謝料として300万円の支払を提示した。

ポイントとしては、別居期間の長さと、誠意ある対応(生活費の支払、慰謝料の提示等)を取ったかどうかが重要になってきます。

相談者
相談者

③の事情に関してお聞きしたいのですが、離婚により相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる場合とは、具体的にどのような場合を想定しているのでしょうか。
なお、私の妻は、仕事をしており、300万円程度の年収を得ております。また、500万円程度の預貯金も持っております。

弁護士
弁護士

③の事情(離婚により相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる場合)は、極めて例外的な場合が想定されておりますので、これによって離婚が認められないというケースは滅多にありません。

もっとも、以下の1.と2.がいずれも当てはまるようなケースだと、③の事情を理由に離婚が認められない可能性があります。

1. 妻は無職であるところ、かなりの高齢で重い病気を患っているため、新たに職に就くことは極めて困難である。
2. 妻の資産はほとんどなく、夫(有責配偶者)から毎月一定額の生活費の支払を受けないと、生活が成り立たない状況である。

本件では、奥様は300万円程度の年収を得ており、かつ、500万円程度の預貯金を所持しておりますので、離婚により奥様が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれることにはならないでしょう。

以上のとおり、今回は、有責配偶者でも離婚が認められる場合について、説明させていただきました。
有責配偶者からの離婚請求は認められにくいですが、本書面に記載しましたとおり、事情次第では認められる可能性があります。

もっとも、認められるかどうかの判断がかなり難しいため、悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度弁護士に相談されることをお勧めします。
また、初回のご相談の場合、60分3,300円(税込)となっており、通常(60分1万1,000円(税込))よりもお安くなっておりますので、お気軽にご相談ください。

※2023年8月時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

電話で問い合わせ052-231-1706
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