相手方に妻子があることが後から分かった場合

前回のコラム(自分が不貞をしているとは思わなかった!?)で、相手方が結婚しているとは知らなかったり、結婚していることは知っていても、婚姻関係破綻状態であると信じていた場合には、故意・過失が否定され、責任が否定されると解説しました。

では、最初の頃は、交際相手が結婚していることを隠されていて知らなかったけれど、後から知った場合、責任はあるのでしょうか。

相手方に妻子があることが後から分かった場合

結論から言うと、結婚を知らない間の交際については責任が無いが、知った後からの交際については責任がある、ということになります。

すなわち、結婚を知らなかった間は本人に故意・過失は無いと言わざるを得ませんが、知った後に交際を継続したら、「相手方と交際することが、いまだ破綻していない婚姻関係を破綻させるものであることを認識し」ていることになるからです。

もう好きになってしまっているのに、今更交際をやめないといけないのは、おかしいではないか、という意見もあるかもしれません。が、心情的には理解できても、法的には許されないということです。

東京地裁平成24年6月22日判決では、「婚姻関係を知った日以降に交際を続けた点において不貞行為があると認められ、不法行為が成立する」と述べています。

逆に、東京地裁平成22年9月24日判決では、内容証明郵便が届くまで交際相手が事実婚の状態にあることを知らなかった事案において、内容証明が届いてから男女関係を清算していることを理由に、損害賠償責任を否定しています。

当然のことではありますが、交際相手が結婚していることを知った後、交際を続けるのは相応の覚悟がいるということになります。

弁護士 片岡憲明

※平成30年8月28日時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明

弁護士 片岡 憲明

弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)

1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。

企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。

愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。

常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。

電話で問い合わせ052-231-1706
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