高収入の方の離婚

高収入の方の離婚に際しては、養育費・婚姻費用、財産分与において、特殊な扱いをすべき場合があります。

婚姻費用や養育費を決める必要がある場合、裁判官の研究会が発表した「算定表」と呼ばれるものを参考にして、その金額(月額)が決められることが一般的です。

「算定表」では、年収が高ければ高いほど婚姻費用、養育費の水準が高くなるように設定されていますが、「算定表」に示されている上限が年収2、000万円(サラリーマンの場合)となっているため、これより高額な収入がある場合には、「算定表」を見ても金額が分かりません。

高所得者の離婚

年収が2,000万円を超す場合の婚姻費用・養育費

年収が2,000万円を超す場合には、その配偶者の年収に応じて、金額も上昇していくという考え方があります。別居中の配偶者や離婚後の子どもに対して、義務者の生活と同等の生活を保持させる義務があるためです。

一方で、年収が2,000万円を超す場合には、収入のすべてを生活費として使うわけではなく、貯蓄などに回される可能性が高いため、婚姻費用、養育費は「算定表」にある基準を最大値として、いわば打ち止めとする考え方もあります。

このようなケースでは、定説があるわけではありませんので、これまでの夫婦生活や現在の貯蓄などを考慮し、最終的には裁判官が判断することになります。

年収が2,000万円を超す場合の財産分与

年収が2,000万円を超す場合の財産分与

財産分与については、1/2ずつで分けるというのが通常の処理です。これは、夫婦においては収入に差があっても、財産を形成するのに同程度の寄与があったと推定されるからである、と考えられています。

この考え方からすれば、夫婦の一方の特別の努力や能力によって高額の資産が形成された場合には、他方が1/2の寄与をしているとはいえない場合があるはずです。

実際に古い裁判例では、7:3の割合で財産分与をおこなったものがあります。

最近の大阪高等裁判所の判決でも、夫が開業医である医師(医療法人の経営者)であり、妻は家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していた夫婦について、寄与割合を6:4としたものがあります。夫が婚姻前に医師の資格を獲得したこと、勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたこと、婚姻後に医師資格を活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮したものです。

この判決は、一般論として、

  • 1.高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合
  • 2.スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、一定の時期以降は高額な収入を維持し得なくなり、かえって通常の労働者より厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合

などには、そうした事情を考慮して寄与割合を加算することを認めています。

スポーツ選手などの特殊性がはっきりしている場合はともかく、単に専門職というだけではだめで特殊な能力・努力があったことを証明する必要があります。また、他方の配偶者の貢献がないことの証明は困難な場合が多いと思われますので、裁判官に対して説得力のある主張・立証ができるかが重要です。

年収が2,000万円を超す場合の財産分与

財産分与の交渉時には課税を意識しましょう

財産分与の交渉にあたっては、分与者が、自分にかかる税金を恐れ、分与を渋ることもありますから、もらう側は分与者の不安を取り除くよう、大まかな税金の知識を身につけておくべきでしょう。

まず、金銭を分与した場合は、特に分与者に税金が発生することは基本的にありません。したがって、金銭を分与したら課税に問題が生じない旨説明することは有益です。

次に、不動産などを分与した場合は、分与者に課税が生じますから、注意が必要です。

たとえば、2000万円で取得した不動産が現在6000万円の価値を有していて、これを無償で妻に財産分与する場合、平成30年現在の税制をもとにおよその計算をしますと、6000万円(現在価値)-2000万円(取得費)-3000万円(特別控除)=1000万円が譲渡所得となり、これに、当該不動産の所有期間に応じた税率をかければ、税額が出ます。

このような税金が発生することは念頭に入れた上で、財産分与の金額交渉を行うのが望ましいと言えます。

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