財産分与

離婚調停中の妻の財産を調べる方法はありますか?

私は妻と、離婚調停中です。再婚して12年余り同居していましたが、突然妻は出ていきました。個人で高級輸入品の小売業をしており、妻に、専従者給与を毎月50万円支払ってきたので、結婚してから名目で7200万円支払っています。

ところが、妻は預金が200万円しかないと言っています。財産をどこかに隠していると思いますが、調べる方法はありますか。

離婚において、財産分与は一番もめる論点です。双方とも正直に、自分の管理している預貯金、株式等の有価証券、生命保険、金などの財産を開示すれば、スムーズに進みますが、財産を隠す場合が少なくありません。

お互いに、相手方の財産につき、財産開示を求めることになりますが、これを拒否することがあります。
例えば、自分は離婚をしたくないし、離婚原因がないから、離婚は認められないので、財産開示をしない、と反論することがあります。しかし離婚訴訟の場合でも、離婚原因の審理付帯処分事項である財産分与に関しては、審理は並行して行われます。離婚原因が認められる場合に、初めて財産分与の審理に進むという先後関係はありません。調停でも同様で、裁判所は、開示を拒否する配偶者にも財産開示を求めます。

その他にも、財産分与対象財産の存在は、財産分与請求をする権利者の方に証明責任があるから、任意に開示する必要はない、と言って頑張る人もいます。確かに財産分与を主張する側に証明責任がありますが、調査嘱託申立により財産調査をすることができますから、裁判所も財産開示をするよう強く促します。また不誠実な財産開示拒否をすると、裁判所の心証も悪く、不利益な判断をされることがあり得ます。

次に、調査嘱託申立の説明をします。
申し立ての前にまずは、相手方に対して、できる限り具体的に財産開示を求めます。例えば○○銀行に預貯金がある、○○証券会社で株式取引をしている、○○生命保険会社に掛け捨てではない保険がある、勤務先での財形貯蓄がある、退職金が支給される、などと指摘して開示を求めます。

それでも、任意に開示しない場合には、それらの金融機関、証券会社、生命保険会社、勤務先等につき、裁判所へ調査嘱託の申立をして、調査を申し立て回答してもらうことができます。多くの場合、ここまですれば、任意に開示することが多いとは思います。

相手方の預貯金について、金融機関、証券会社などに調査嘱託申立する場合には、支店を特定したうえで、蓋然性を具体的に疎明して申し立てることにより裁判所は採用します。従って、まったく当てずっぽうで申し立てると、探索的だという理由で採用してもらえません。しかも、調査事項として認められるのは原則として、基準時点での残高のみです。

その前に預貯金などを、他の預金口座等に資金移動している疑いがある場合には、過去にさかのぼって取引履歴を調査する必要はあるのですが、具体的に疎明しないと、裁判所は認めてくれません。私の経験では、最長で別居前2、3年でした。

月刊東海財界 2023年4月号掲載

配偶者の財産をうまく調べる方法を教えてください

離婚をする場合、財産分与によって、夫婦でこれまでに築き上げた財産を分けることになりますよね。夫(妻)がどんな財産を持っているかを把握するために、どのような調査をすればよいでしょうか?

 
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、同居時から別居時までに夫婦で協力して築いた財産です。
双方の名義の不動産、預貯金、保険、有価証券、自動車等が典型です。
 
相手方の財産の調査方法
まずは、別居する前に、他方配偶者の財産を調査しておくとよいでしょう。
たとえば、預金通帳などは1箇所にまとめてある場合が多いため、探してみて、銀行名、支店名、残高をメモしたり、写真を撮ったりしておくとよいでしょう。また、証券会社から郵便物が届いた場合は、その証券会社に口座を保有している可能性が高いため、その証券会社名をメモしておくとよいでしょう。保険会社についても同様です。

協議でまとまらず、離婚調停や訴訟など裁判所の手続を利用する場合は、調査嘱託という制度を利用して、裁判所に調査してもらうという方法もあります。

もっとも、探索的に調査を依頼しても認められませんので、預貯金であれば金融機関と支店、保険であれば保険会社名と保険の種類などと特定し、ある程度の資料を確保しておく必要があります。
 
別居前の調査が大切
以上のように、財産分与をする際には、まず他方配偶者がどのような財産を持っているかを把握する必要があります。
別居をすると把握が難しくなる場合もありますので、弁護士に相談の上、別居前に準備することをお勧めします。

財産分与してもらうと税金がかかる?

私たち夫婦は結婚して20年になりますが,夫の浮気が原因で離婚することになりました。

これまでの夫婦生活で形成した預貯金や,自宅不動産などを財産分与してもらう予定なのですが,財産分与として夫からお金をもらうと,贈与税が課税されるのでしょうか。

もし課税されるのであれば,課税分も考慮して財産分与の金額を決めたいと思います。

離婚によりご主人から財産をもらっても,基本的に贈与税が課税されることはありません。

ご主人から財産を「もらう」といっても,贈与としてもらうわけではなく,離婚によって発生する財産分与請求権に基づき受け取るものだからです。

財産分与は,夫婦の財産関係の清算や,離婚後の奥様に対する生活保障などの趣旨から認められるものですので,贈与ではないのです。

ただし,贈与税がかからないことを悪用し,財産分与を仮装して,財産を移転させるようなことがあれば,贈与税が課税されます。

具体的には,

①分与された財産額が,婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮しても,なお多すぎると認められる場合

②離婚が贈与税や相続税を免れるためにされたと認められる場合

ですので,ご注意下さい。

 

妻が相続した財産は夫婦のもの?

現在、10年前に結婚した妻と離婚協議中です。
妻は、結婚後2年ほどたったときに、実父から不動産を相続し、その後はその不動産を賃貸していました。
妻は、この不動産は夫婦で取得したものではないので、財産分与の対象ではない、と主張していますが、妻の主張は正しいのでしょうか。

1 問題の所在

このように、長い結婚生活の中で、相続で親の遺産を引き継ぐ配偶者がいるときに、それが財産分与の対象となるか、争いになるケースがあります。
その財産が対象となるか否かで結論に影響があるため、激しい対立となることも少なくありません。

2 原則(対象とならない)

原則として、夫婦それぞれが所有している財産は、「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。
財産分与は、夫婦で形成した財産(「共有財産」)を公平に分けましょう、というものですから、夫婦で形成していない財産は財産分与の対象にはならないのです。

3 何が「特有財産」となるのか

「特有財産」になるのは、婚姻前から夫婦それぞれが所有していたものや、婚姻中に一方が相続や贈与により取得したものなどです。
今回の場合、不動産は妻が相続により取得したということですので、妻の特有財産になります。

今回は不動産の場合ですが、預貯金で遺産を取得した場合は注意が必要です。
というのも、預貯金は、管理をいい加減にしていると、共有財産である預貯金(夫婦で管理している預貯金口座や、給料が入ってきている口座などです。)に入り込み、共有財産と特有財産との区別ができなくなります。
最悪のケースでは、共有財産が混ざってしまっているため、全体を共有財産とされてしまうこともあり得ます。

また、親からもらった遺産だとしても、古すぎてその証拠がないケースもあります。
このように、預貯金の場合は、「特有財産」であることや共有財産と区別して管理されていることの立証が難しいケースがあり、注意が必要です。

4 「特有財産」であっても財産分与するべき場合もある(例外)

ただし、取得後の財産の維持、散逸の防止に夫が貢献した場合などには、財産分与が認められることがありますので、必ず財産分与の対象とならないとは言い切れません。
例外に当たらないか、慎重に検討するべき事案もあるので、財産を取得された経緯や管理の状況などを詳しくご説明頂く必要がございます。

子ども名義の財産は財産分与の対象になる?

私たち夫婦には,現在13歳の長女がおり,長女の学資のために,これまで少しずつ長女名義で預金していました。

現在離婚協議中ですが,夫は,長女名義の預金まで財産分与の対象にすべきと主張しています。

私としては,長女のために貯めたお金ですから,長女のお金だと思うのですが,財産分与の対象になるのでしょうか。

 

名義にかかわらず,夫婦で形成した財産であることが明らかである以上,財産分与の対象になります。

したがって,このように親が貯めた財産は,長女名義であっても,財産分与の対象になります。

もちろん,当事者間で,財産分与の対象からのぞく,という合意ができれば,財産分与の対象にする必要はありません。

また,お子さんが自分のお年玉を貯めた貯金など,お子様自身の財産といえる場合には,財産分与の対象にはなりません。

退職金は財産分与の対象になる?

夫は,勤続30年で,退職まであと2年あります。

退職金が相当額入る予定なのですが,退職金が入ってから離婚しなければ,退職金は財産分与の対象にはならないのでしょうか。

将来受領できるはずの退職金は,確実に受領できるものとは限りませんので,かつては,財産分与の対象になるか否か判断が分かれていました。

しかし,現在では,将来受領できる蓋然性が高い場合には,財産分与の対象とするという考え方が一般的になっています。

退職まであと2年であれば,将来受領できる蓋然性は高いといえますので,受領する前であっても基本的には財産分与の対象になるでしょう。

もっとも,現実に受給していないものですので,具体的にその金額をどのように計算するか,という点や,支払い時期(受給された時点か,現在か)という点については判例も分かれています。

夫名義の財産は夫のもの?

現在夫と離婚の話合いをしています。

特に不動産や自動車もなく,夫婦の財産といえば預貯金くらいなのですが,夫は,「俺の名義の預貯金は俺のもの,お前の名義の預貯金はお前のものだから,特に分けるものはないね。」と言っています。

夫の給料はほとんど夫名義の口座で管理していたので,私名義の口座にはわずかな残高しかありません。

夫の言っていることは正しいのでしょうか。

 

法律では,離婚した場合,相手に対して財産分与の請求をすることができる,と定められています(民法768条1項)。

財産分与の請求とは,基本的には,これまで夫婦二人で共同して形成してきた財産の清算をしましょう,というものです。

夫名義だから財産分与の対象にならないということはなく,夫婦で形成した財産であれば,財産分与の対象となりますので,ご主人の言い分は間違っています。

また,預貯金くらいしか財産がないということですが,将来支給される予定の退職金や生命保険の積立金のように,手許にない財産も財産分与の対象となることがありますので,財産分与の対象となる財産については,注意して検討する必要があります。

電話で問い合わせ052-231-1706
       
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