Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
妻が相続した財産は夫婦のもの?
妻は、結婚後2年ほどたったときに、実父から不動産を相続し、その後はその不動産を賃貸していました。
妻は、この不動産は夫婦で取得したものではないので、財産分与の対象ではない、と主張していますが、妻の主張は正しいのでしょうか。
1 問題の所在
このように、長い結婚生活の中で、相続で親の遺産を引き継ぐ配偶者がいるときに、それが財産分与の対象となるか、争いになるケースがあります。
その財産が対象となるか否かで結論に影響があるため、激しい対立となることも少なくありません。
2 原則(対象とならない)
原則として、夫婦それぞれが所有している財産は、「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。
財産分与は、夫婦で形成した財産(「共有財産」)を公平に分けましょう、というものですから、夫婦で形成していない財産は財産分与の対象にはならないのです。
3 何が「特有財産」となるのか
「特有財産」になるのは、婚姻前から夫婦それぞれが所有していたものや、婚姻中に一方が相続や贈与により取得したものなどです。
今回の場合、不動産は妻が相続により取得したということですので、妻の特有財産になります。
今回は不動産の場合ですが、預貯金で遺産を取得した場合は注意が必要です。
というのも、預貯金は、管理をいい加減にしていると、共有財産である預貯金(夫婦で管理している預貯金口座や、給料が入ってきている口座などです。)に入り込み、共有財産と特有財産との区別ができなくなります。
最悪のケースでは、共有財産が混ざってしまっているため、全体を共有財産とされてしまうこともあり得ます。
また、親からもらった遺産だとしても、古すぎてその証拠がないケースもあります。
このように、預貯金の場合は、「特有財産」であることや共有財産と区別して管理されていることの立証が難しいケースがあり、注意が必要です。
4 「特有財産」であっても財産分与するべき場合もある(例外)
ただし、取得後の財産の維持、散逸の防止に夫が貢献した場合などには、財産分与が認められることがありますので、必ず財産分与の対象とならないとは言い切れません。
例外に当たらないか、慎重に検討するべき事案もあるので、財産を取得された経緯や管理の状況などを詳しくご説明頂く必要がございます。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。