財産分与の対象に退職金が含まれるか

財産分与においては、夫婦で共同して形成した財産を分けることになりますが、この分けるべき財産の中に、退職金が含まれるかが問題となります。

1 退職している場合

財産分与の対象となる財産を算定する基準時点(通常は別居時点)で、既に退職している場合には、退職金が現実に手元にあるわけですから、預貯金などの他の財産と同様に、財産分与の対象となります。

ただし、退職金は、長年勤務したことに対して支払われるという側面がありますので、当然に全額が財産分与の対象となるわけではありません。一般的には、在職期間に占める同居期間の割合を計算し、その割合に応じて財産分与の対象とすべき退職金額を算定します。 たとえば、30年間勤務して3000万円の退職金が支給された場合、そのうち20年間が同居期間であったならば、2000万円を共有財産として算定することになります。

なお、財産分与は、基準時点に存在した財産を分けるものですので、退職金を受領した後、相当期間が経過し、基準時点で既に消滅してしまっている場合には、財産分与の対象となりません。

2 退職していない場合

(1)退職していない場合には、そもそも、退職金が支給されるかどうかが確定していません。定年前に退職する可能性もありますし、退職する理由、すなわち自己都合か会社都合か、さらには懲戒解雇かなどによって、金額が変る可能性もあります。
そこで、まずは退職金が支給される可能性が高いといえるかが問題となります。

基準時点から退職までの期間が短い場合には、退職金支給の可能性が高いため、未支給の退職金も財産分与の対象とされやすくなります。また、退職までの期間が長くとも、公務員や上場企業など安定性の高い勤務先である場合には、財産分与の対象とされやすくなります。

(2)退職金が財産分与の対象とされる場合には、具体的にどのように退職金額を算定するかが問題となります。この点は、大きく以下の二つの考え方があり、事案によって判断は異なります。

  1. 基準時点での退職金額をベースとする方法
    基準時点で退職した場合に支給される退職金額をベースとします。基準時点で退職した場合の退職金が300万円であれば、基準時点までの勤続期間における同居期間の占める割合に基づき、共有財産部分を算定します。
  2. 定年時点での退職金額をベースとする方法
    定年時に退職した場合に想定される退職金額をベースとします。ただし実際には手元にないお金ですので、これを前もって受け取ることを前提に、現時点での価値を計算し直し(中間利息控除という方式を取ります。)、さらに勤続予定期間における同居期間の占める割合に基づき、共有財産部分を算定します。

3 まとめ

退職金以外にも、見過ごされがちな財産があります。きちんと清算したいとお考えの場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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