在日韓国人同士の離婚は、日本でできますか?
日本人と外国人との離婚が、90年代から急速に増え、全離婚の占める割合は、06年に6.12%とピークを迎え、その後減少傾向にあり、19年には3.66%となっています。夫が日本人で妻が外国人という組合せが圧倒的に多く、国別では中国人、フィリピン人、韓国人という順になっています。私の事務所では、日本人と韓国人、中国人との離婚事件を何件も担当してきましたが、この場合は日本法が適用されます。メンタリティーの違いから、解決が困難だと感じることはあります。
今回のような韓国人同士の離婚事件も担当することが時々あり、現在も継続中の事件があります。中国人同士の離婚訴訟も経験がありますが、中国で離婚登記をするまでにはかなりの困難があります。
まず、韓国人夫婦の離婚につき適用される法律は、日本法ではなく韓国法です。どの国の法律が適用されるかは、準拠法とよばれますが、「法の適用に関する通則法」という法律で決められています。
また、これとは別に、国際的な民事紛争の裁判をどの国で行えるのかという問題(国際裁判管轄)もありますが、ここでは説明は省略しますが、今回のケースは日本の裁判所で裁判することになります。
ところで、韓国人同士が協議離婚を選んで、日本の市区町村へ届け出して離婚できるでしょうか。韓国法では、協議離婚を認めていますが、日本とは異なり、いきなり家族関係登録簿に離婚の事実は登載できません。裁判所の確認が必要とされています。日本においても現在では、裁判所の確認は、離婚の実質的な要件と考えられて、日本の市区町村では韓国人同士の協議離婚届出は受理されないことになっています。
在日韓国人の場合、協議離婚届出をする上で、韓国の裁判所に出向いて確認の手続きを取ることが困難なため、韓国大使館か韓国総領事館(名古屋市にあります)で、裁判所の確認に代わる手続きが用意されています。
ただ、財産分与や慰謝料、養育費などで争いがある場合や、夫婦そろって韓国総領事館などに出向くのが難しいケースには、日本の家庭裁判所の調停を利用して、調停が成立すれば、韓国においても、裁判所の確認を経たものとして、離婚が正式に受理されます。
調停離婚成立後、韓国総領事館に在留資格証明書などの身分証明書を提示して、離婚調書及び韓国語翻訳文と、双方の家族関係証明書を提出すれば、韓国の家族関係登録簿に離婚の事実が登載されます。 なお、韓国では戸籍制度が廃止され、2008年からは家族関係登録制度が採用されています。
月刊東海財界 2022年1月号掲載
同性カップルの事実婚は、男女間と同じように法的保護が認められるのか?(LGBT)
実は1年前、35歳の女性Aさんと交際を始め、結婚を前提に同棲を開始しました。私は、AさんはBさんと、同居していることは知っていましたが、最近になって、Bさんから、私達はLGBTで、結婚式も挙げていた、幸せな結婚生活を送っていたのに、その関係を壊されたので、慰謝料請求をすると言われました。私とAさんは応じなければならないでしょうか。
最近、自民党が、「日本がちゃんと多様性を認める、そして寛容な社会を作っていく」との号令の元、LGBTなどに対する理解増進に向け、超党派の議員連盟で、同性婚を認める法案の審査を行いました。しかし、法案に反対する議員が大勢を占めた、とのことでした。
同性婚は、2001年4月にオランダで初めて認められ、欧米諸国を中心に拡大し、19年5月には台湾で同性婚法が施行されました。
日本ではそこまでは至っていませんが、15年、渋谷区が同性カップルにパートナーシップ証明書を発行する条例を施行し、78の自治体にも広がっています。
19年2月に、国が同性婚を認めないのは、婚姻の自由などを保障する憲法に違反するとして、札幌、東京、名古屋、大阪地裁で一斉に提訴されました。そして、今年3月17日、札幌地裁において、同性婚が認められないことは、憲法14条の「法の下の平等」に照らし違憲だ、との判断を示しました。
今回のご相談のケースは、このような最近の世論や、裁判の流れの延長線上にある事例だと思います。
実は、昨年、東京高裁で、本件と同じような事例で判決が言い渡されています。
その事例は、甲と乙とは、平成22年2月から同居を始めて、平成26年12月ニューヨーク州法に基づき婚姻して、婚姻登録証明書を取得し、その後日本でも結婚式を挙げました。甲と乙とは子供を育てたいと思い、乙において精子提供を受けることにして、SNSを通じて精子提供者を募ったところ、丙が応じて精子を提供しましたが、その後乙と丙が親しくなって、結果的には甲と乙との婚姻関係が破綻した、という内容でした。
この主な争点は、同性の事実婚が法的保護を受けられるか否か、にあります。
一審は、「同性の事実婚の実態に着目して、男女間の内縁関係と同視できる生活関係にあるものについては、内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められる」として、100万円の支払を認めました。しかし、丙については、「甲と乙との関係を破綻させることを意図していたと認められない」としました。
高裁判決は、結論は同じですが、「夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあった」と、一歩突っ込んだ理由を付けています。
ご相談のケースについて、貴方が、AさんとBさんとが、婚姻生活に準ずる関係にあったことを知って、その関係を壊した、と判断されれば、Aさんと共に、損害賠償責任を負うことになりそうです。
月刊東海財界 2021年7月号掲載
離婚したら住宅ローンは払わなくてよい?
夫が3500万の借入をし,私も連帯保証人になっています。
このたび離婚することになり,夫が自宅に住み続け,私は出て行くことになりました。
離婚したという理由で,私は連帯保証人から外してもらえるのでしょうか。
離婚して,自宅にも住まない以上,住宅ローンを払いたくない,と思われるのはもっともです。
しかし,一度連帯保証人として署名押印した以上,離婚によって連帯保証人の地位が変更されることはありません。
連帯保証人から外して欲しいと金融機関に相談することはできますが,実際に外すかどうかは金融機関の自由であって,強制することはできません,
もちろんご主人と話し合い,夫婦の間で,きちんとご主人が払うようにする,という約束をすることはできますが,そのような約束をしても,連帯保証人の地位には何ら影響しません。
したがって,ご主人がローンの支払いを怠った場合には,金融機関から支払いを求められてしまうことになります。
内縁関係とは?
色々と事情があるために籍は入れていないのですが,夫婦として生活しており,お互い親族への挨拶もしています。
婚姻届は提出していないけれど,私たちのように夫婦として生活している場合,法律上はどのように扱われるのでしょうか。
婚姻届は提出していないものの,お互いに婚姻の意思をもって,実際に夫婦として生活している場合を,「内縁」関係にあるといいます。
法律上の婚姻関係とは異なり,どちらかが氏を変更して夫婦が同じ氏を使う,ということにはなりません。
夫婦のどちらかが死亡した場合でも,配偶者としての相続権はありません。
また,子どもが産まれた場合,独身女性が出産した子どもということになりますから,親権は原則として母親の単独親権となります。
他方,法律上の夫婦と同様,同居・協力・扶助義務はありますし ,貞操義務もあります。
また,夫婦どちらかが交通事故などにより亡くなった場合,他方の当事者には固有の慰謝料請求権(民法711条)が認められるのですが,この規定も内縁の場合に準用されます。
離婚後でも慰謝料請求はできる?
協議の末,離婚届を提出したのですが,離婚後,実は夫に交際している女性がいたことがわかりました。
性格の不一致など単なる口実で,その女性と再婚したかったのだと思います。
夫を問い詰めて慰謝料を請求したところ,もう離婚したんだからおまえには関係ないと言われてしまったのですが,離婚してしまったら,もう慰謝料は請求できないのでしょうか。
ご主人が,婚姻中から女性と交際していたのであれば,ご主人の不貞行為になりますので,不法行為として慰謝料が請求できます。
交際が発覚したのが離婚後であったからといって,不貞行為の違法性がなくなったり,慰謝料を請求する権利が消滅したりするわけではありません。
ただし,ご主人から,交際を開始したのは離婚後であると主張されることが考えられますので,婚姻期間中から交際していたことが明らかとなる証拠を揃えておくことが必要です。
もちろんご主人だけでなく,交際相手の女性に対しても慰謝料請求が可能です。
話し合いによる解決が難しい場合には,調停または訴訟手続により請求することになります。
なお,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,損害及び加害者を知ったときから3年ですので,ご注意下さい。
離婚慰謝料はいくらもらえるの?
主人は会社員で,年収は約1500万円あります。
主人の責任で離婚することになった場合には,慰謝料として,年収の何割かがもらえると決まっていると聞いたことがありますが,本当でしょうか。
夫婦の一方の有責行為によって,やむを得ず離婚に至った場合,そのために被る精神的苦痛について,慰謝料の請求が認められます。
この慰謝料とは,厳密には離婚原因となった行為(本件の場合は浮気)から生じる精神的苦痛に対する慰謝料と,離婚により配偶者としての地位を喪失することに対する慰謝料に分けられますが,両者を一括して処理されることが多いです。
慰謝料の相場に関するご質問はよくありますが,慰謝料の金額は,①相手方の有責性の程度,②婚姻期間の長短,③相手方の資力などを総合考慮して決められるものであり,年収の何割,などという明確な基準はありません。
事案によって金額は大きく異なっており,50万円程度の場合も,500万円程度の場合もあります。
なお,相手方が有責であることを立証しなければなりませんので,ご主人が浮気しているのであれば,確実な証拠を揃えておくことが必要です。
離婚後も今の夫の名字を使うことができる?
職場の同僚や友人との関係もあるので,離婚後も夫の名字を名乗り続けたいのですが,可能でしょうか。
また,その後旧姓に戻りたくなったときには,すぐに戻ることができるのでしょうか。
離婚した際には,旧姓に戻るのが原則です(民法767条1項)。
もっとも,ご質問のように,仕事や家庭の事情から,婚姻時の姓をそのまま使用したいという方がいらっしゃるため,法律では,離婚の日から3か月以内に届け出をすれば,婚姻時の姓をそのまま使用することもできると定められています(同条2項)。
具体的には,離婚の日から3か月以内に,「離婚の際に称していた氏を称する届」という書類を役所に出すことになります。
単に役所に届け出るだけなので,手続としては比較的簡単といえます。
しかし,婚姻時の姓を使用してしばらく生活した後は,届け出により簡単に旧姓に戻ることはできず,家庭裁判所に,「氏の変更の許可の申立」をする必要があります。
変更が認められるためには,「やむを得ない事由」があると認められること,つまり,氏の変更をしないと,社会生活において著しい支障をきたすと認められることが必要です。
旧姓に戻る場合には,「やむを得ない事由」について比較的緩やかに認められていますが,100%認められるわけではありませんので,離婚の際には,婚姻時の姓を使うか,旧姓に戻るか,よく考えて決めて下さい。