Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
突然出て行った妻に、生活費を払う必要はありますか?
毎月の年金額は33万円です。他に相続した土地を貸して毎月10万円賃料が入ってくるし、兄の株式会社の株主(結婚前から)となって、毎年配当金をもらっています。
2人の子供は独り立ちしています。
ところで58歳になる妻は、突然家を出てしまいました。
1 2万円のパー卜給与では生活できないので、生活費を払ってほしい、と言ってきたのですが、生活費を払う必要がありますか。
奥さんが不貞をして出て行ったというような場合は除き、生活費(婚姻費用といいます)を払う必要があります。このような事案については、まずそれぞれの年収を計算し、いわゆる標準算定方式・算定表に従い、その金額を決めます。
この事例では、あなたの年金額が33万円ですので、通常年額396万円を収入ととらえます。土地賃料の年間120万円は、あなたの特有財産(夫婦で共同して取得したものではないという意味)から発生します。また、配当収入も同様です。財産分与をする場合だと、このような賃料収入・配当収入から形成された預貯金は、対象財産からは除かれる可能性が高いと考えられます。
ところで、婚姻費用の算定基礎となる収入には加えられるのでしょうか。これらの収入は考慮外とする考え方もあり得ると思います。なお、奥さんについては、144万円が前提収入となります。
したがって、このそれぞれの年収をもとにして、夫婦のみの場合として、上記標準算定方式・算定表を見て決めることになります。
最近、裁判例で次のような注目すべき判断がされました。
このケースでは、夫は、会社からの報酬504万円、自社株から200万円の配当収入、公的年金128万円、不動産所得20万円がありました。第一審の家庭裁判所では、配当収入、不動産収入、年金収入を除いて、年間収入をとらえて、婚姻費用を月額9万円としました。配当収入200万円は夫婦の生活費に供されていなかった、と判断したのです。
ところが、大阪高等裁判所においては、給与以外に、配当金、不動産収入、年金収入も考慮して考えるべきであるとして、月額1 3万円に変更しました。夫側は、配当収入金や不動産所得は、夫婦の共有財産に当たらないから、収入認定は役員報酬に限定すべきと反論しましたが、たとえ夫の特有財産からの収入財産であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の基礎とすべき収入になると判断しました。
また、年金収入に関しても、本来働いている場合に認められる職業費の控除は、年金収入の場合には職業費(給与収入の20%程度)を必要としないから、年金収入を0.8で割った数字を所得として加えるべきであるとの判断をしました。
おそらく、婚姻費用の本質が、夫婦の扶養義務に基づくものだと判断したのでしょう。
月刊東海財界2019年10月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



