Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
婚姻費用・養育費の算定基準が変わるそうですが、離婚時期についてアドバイスをお願いします
私は正社員で年収250万円、夫は年収600万円です。実は夫との離婚を考えていますが、すぐに離婚すると、子供をかかえて生活していくのに不安があります。
いますぐ離婚せずとりあえず別居して、婚姻費用をもらい、時期を見て離婚して養育費をもらおうと考えています。
裁判所で調停や裁判をした場合の、算定基準が変わると聞いていますが、そのこともふくめてアドバイスをお願いします。
女性としては、収入が一般的に少ないので、婚姻費用・養育費がどれだけになるかは重要な関心事です。私も、女性の代理人として婚姻費用・養育費を請求する場合、未成年の子供をかかえているケースでは、調停や裁判で認められる金額が少ない、と感じることがよくあります。
裁判所が指針としている婚姻費用・養育費の基準表は、東京・大阪の裁判官、調査官による養育費等研究会が、平成15年4月に判例タイムズ(法律誌)で発表したもので、全国の裁判所において採用され、ネットで誰でも見ることができます。
この算定表は、子どもの年齢や人数、支払者と受取者の年収に応じて、金額がすぐに分かりますが、かねてより低額で、シングルマザーにとって厳しい金額となっているとの批判がありました。
ちなみに今回の事例で当てはめると、婚姻費用は約12万円、養育費は約9万円強となります。女性の収入がそこそこあるので、何とか生活していけそうですが、お子さんの衣食や、学校関係費用もかなりかかるので、苦しいと思います。夫の収入がさらに低く、妻の収入が少なくなれば、妻の婚姻費用・養育費を含む総収入はかなり下がっていき、もし専業主婦だと生活が困難になるでしょう。
実は、平成28年11月15日に日本弁護士連合会は、現在の算定表が、時代に対応しておらず、分担義務者の生活水準に比べて、養育費・婚姻費用がかなり低く算定されているとして、独自の検討を経て算定表を公表しました。しかし、裁判の実務では採用されることはなかったです。
このような流れを受けて、最近、この算定表について、最高裁司法研修所が見直すことが公表されました(執筆後の12月23日、新算定表がウェブサイトに掲載されました)。
裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
現行の算定表による婚姻費用・養育費が低額すぎるとの批判があったので、増額される方向での内容になりますが、夫婦の収入などによって、増額の程度は異なるものと思われます。
なお、とりあえず別居して婚姻費用をもらい続けて、すぐには離婚をしないとの作戦は、夫の収入が多くて婚姻費用がたくさんもらえる場合にはお勧めします。しかし、夫の収入が少ない時は、離婚した際に母子手当がもらえたり、市営住宅などに入りやすくなることのメリットを総合して判断することが得策です。
月刊東海財界 2020年新年号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



