Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
住宅ローンや電気等の公共料金も負担しているのに、婚姻費用を払わなければいけませんか?
5年前に建売住宅を購入しましたが、住宅ローンを利用しています。私と妻は毎日のように喧嘩しており、私は我慢できず、勤務先近くの賃貸マンションで別居しています。
妻の男性関係が疑われ、私は、離婚をしたいと切り出しました。しかし、妻は離婚には応じない、生活費も払ってほしい、と主張します。
住宅ローンも払っているし、電気等の公共料金も負担しているのに、これ以上払わなければいけないでしょうか。
夫は婚姻継続中、別居の有無にかかわらず、婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。夫は、自分と同じレベルの生活を、妻にも保障しなければならないという生活保持義務があるからです。
もし婚姻費用を払わないと、妻は、家庭裁判所へ婚姻費用分担調停の申し立てをするでしょう。
この調停にはご自身でも対応できますが、たんに、「こんなひどい妻からの請求はおかしい。」、「妻が住んでいる自宅は、私が住宅ローンを払っているし、電気・ガス・水道料金も負担しているので、これ以上払えない。妻も働いて生活費を稼げばいい。」とだけ言ってもだめです。
裁判所からは、双方に、収入金額を裏付ける源泉徴収票、所得証明書などの提出を求め、夫には住宅ローン、公共料金などの支払に関する証拠書類の提出を求めるでしょう。
ところで、調停では、裁判所が、婚姻費用及び養育費算定の基準を公表しており、双方の収入から簡単に、婚姻費用金額が分かり、この金額で調停が成立することが一般的です。
今回の事例は、妻が専業主婦なので、収入は原則0円です。しかし、潜在的稼働能力がある(働こうと思えば働ける)場合には、パート・アルバイト労働者の平均賃金を基準(政府統計の「賃金センサス」)にして、稼働能力があるとされ、100万円から150万円程度の収入があるとみなされるかもしれません。この点は、調停でもきちんと主張する必要があります。
但し、妻に健康上の問題があるとか、幼い子供(大体3歳前後がめどです)の育児で働けないといった事情があれば、潜在的稼働能力がないとされます。
ところで、婚姻費用はいつから支払うべきでしょうか。これまでは婚姻費用分担調停申し立て時から、とされてきましたが、最近は、婚姻費用の請求の意思を相手方に通知した時から、と考えるようになってきました。ただ、配達証明付き内容証明郵便で請求した方が良いです。もっとも別居後、財産分与調停申し立て時までの婚姻費用についても、財産分与の精算の中で、考慮されてきました。
それから、夫が自宅を出て、家賃と、住宅ローンを負担している場合、住宅ローンの一部を(住宅ローンの返済は、夫の資産形成に資する面もあるので、全額控除はできません)婚姻費用から控除できます。
ところで、妻の不倫がある場合には、妻の婚姻費用相当額(子供の生活費を除く)を認めない可能性が高いです。
月刊東海財界 2022年3月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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