Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
もし私が早く亡くなったら、子供の親権は元夫ヘ移ってしまいますか?
ただ、私は身体が弱く、もし私が早く亡くなったら、元夫ヘ親権が移ることになるのではないか、と思うと夜も寝られません。
今回の離婚理由は、夫の不貞と暴言ですが、子供に対する暴言・暴力もあり、父親としては失格だと感じていました。
親権が元夫に移ったら、子供はきっと健全に成長できないと思います。なにか対策はありますか。
離婚を決める場合、先のことを細かく心配される方と、楽観的な方と分かれますが、今回のようなケースだと、心配をされることは理解できます。
順番にご説明しますが、親権者となった母親が亡くなった場合でも、親権は父親に当然に移るわけではありません。
親権者が死亡した場合、未成年後見が開始され、未成年後見人に選任された者が、子どもの法定代理人となり、親権者と同一の権利義務をもつことになります。おそらく、相談者のご両親が、未成年後見人に選任されることが想定されます。ただ、元夫が子どもの親権を得たいと考えて、親権者変更の審判を裁判所に申し立てることが考えられます。
生前に、子どもの未成年後見人を、自分の両親に指定しておくことはできますが、そのためには遺言書を作って、未成年後見人を指定しておくことが必要です。なお、未成年後見人は、複数指定しておくことも可能です。
もっとも、遺言書で指定された者は、未成年後見人に就任することを拒否することができますから、事前に了解を取り付けておかなければなりません。
遺言で未成年後見人を指定していた場合
遺言で未成年後見人を指定していた場合の流れを説明します。
後見人として指定されていた者は、遺言の効力発生時(親権者死亡時)に未成年後見人に就任します。ただし、遺言の効力発生時から10日以内に、役所に、遺言書を示し、後見開始の届出をする必要があります。
遺言がなく、元夫も親権者変更の審判の申立を行わない場合
遺言がなく、元夫も親権者変更の審判の申立を行わない場合は、どのような流れで、誰が未成年後見人になるでしょうか。
子ども本人・親族・その他利害関係人・児童相談所長が、管轄の家庭裁判所に、未成年後見人選任の審判を申し立てることができます。
遺言による未成年後見人の指定があり、元夫からも親権者変更の審判があった場合
遺言による未成年後見人の指定があり、元夫からも親権者変更の審判があった場合、どちらが優先するのでしょうか。
未成年後見人を指定する遺言を作ったとしても、元夫は親権者変更の審判の申立てを求めることができます。裁判所はあくまでも、お子さんの意思・生育環境も調査して、子ども自身の利益・福祉を重視して決定を下しますから、遺言の効力が絶対ではありません。
ただ、それまでに、ご両親がお子さんを育てることに懸命に協力し、お子さんとご両親との間に円満な関係が築かれていれば、元夫の申し立てが簡単に認められることはないと思います。
月刊東海財界 2021年8月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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監修者プロフィール

弁護士 片岡 憲明
弁護士法人 片岡法律事務所 代表
愛知県弁護士会所属 登録年(平成15年)
1977年岐阜県大垣市生まれ。東京大学法学部卒業、2001年司法試験合格。2003年より弁護士登録し、名古屋市を拠点に法律実務に従事。現在は、弁護士法人片岡法律事務所に所属。
企業法務・交通事故・民事再生といった案件に携わった経験をもとに、現在は個人・法人問わず多様な相談に対応している。特に、離婚・相続などの家事事件や、労働問題・特許訴訟など企業法務に強みを持つ。
愛知県弁護士会および日弁連の各種委員会にも長年にわたり参加し、司法制度や法的実務の発展にも尽力。現在は日弁連司法制度調査会商事経済部会副部会長を務める。
常に変化する法的課題に真摯に向き合い、依頼者一人ひとりにとって最良の解決を目指している。



