Q&A よくある質問
離婚に関するQ&A
別れた妻の再婚相手と養子縁組した子供の養育費を支払う必要はありますか?
元妻が再婚して、再婚相手とお子さんが養子縁組することは、よくあります。
このような場合、実の父親から養父となった者へ、第一時的扶養義務が移ります。具体的に申し上げると、それまで養育費を支払っていた実父は、養子縁組後は、養育費を支払わなくてもよくなります。このことを知らない方は意外と多く、元妻や養父になった者も、依然として、実父に対して養育費を請求し続けられる、と思っている方がおられます。
ただ、離婚した後、元妻が再婚したことはすぐには分かりませんし、再婚相手と養子縁組したかどうかも分からないのが通常です。離婚する場合、まれに書面で「再婚したり、住所を移転したときは、お互いに連絡する」という約束をすることもありますが、守られないことも多いです。定期的に元妻の戸籍謄本や住民票を取れば確認できますが、なかなかそれも難しいでしょう。
従って、元妻が再婚し、再婚相手と養子縁組したことを知らずに、ずっと養育費を支払い続けるケースが多いでしょう。
ところで、ご質問の事例では、再婚相手と養子縁組した時点で、相談者の養育費を支払う義務が無くなると考えるのが、理論的だと思います。ただ、親権者と養親の収入・資力が十分でないときは、実親が負担することがあるでしょう。
令和元年の東京家裁での審判によると、実親の養育費支払義務は、養子縁組された日に免除されるとしました。
ところが、この審判に対して抗告がなされ、東京高裁では逆転しました。既に支払われて費消された過去の養育費は、720万円に及ぶことを考慮したようで、多額の返還義務を負わせることにより不測の損害を被らせることになること、実親は元妻が、再婚や養子縁組の可能性を認識しながら、3年以上支払い続けたことから、実親は養子縁組の成立時期等に重きを置いていなかったとして、支払義務が無くなるのは、養育費支払免除の調停を申立した時としました。
最高裁は、許可抗告の事例で、養育費減免の時期について、原則として養子縁組等の事情変更時に遡及(さかのぼる)として、諸事情を総合して、変更(養育費減免)の遡及効を制限する事情が認められるかを、判断の枠組みとしているものと思われます。
東京高裁の判断は、理論的には疑問がありますが、実親は、再婚や養子縁組の可能性を認識しながら、支払い続けた点などを、諸事情として考慮したものと思われます。
月刊東海財界 2021年10月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。
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